2014年6月

全音一括弱音化とは異なる弱音化

楽器の音の再現は近代文明の大きな課題のひとつでした。オルゴールや自動演奏のオルガン、ピアノ、レコード、CDと音の再現に人類は挑戦してきました。

自動ピアノの技術も、安定した弱音や高速の反復打鍵の再現のために多大な労力を費やしてきましたが、未だに人間の生演奏の水準に到達していません。もちろん、アンプやスピーカーを集めて一千万円のオーディオシステムを作っても数十万円のピアノの生演奏の迫力にすら及びません。人間は演奏場所の音響の具合を体感しながら打鍵の強弱を極めて微妙に調整することができるからです。ですからどんなにプロのピアニストの演奏を再現し得る自動ピアノでも設置場所の音響に再現性が左右されてしまいます。人間には音響環境に合わせる調整をほぼ無意識のうちに行ひ得る能力があるのです。

ピアノ超弱音システム「ナイトーン」は従来の弱音システムの全音一括弱音化とは異なり、各音を個別に弱音化します。全音一括ですとどうしても隣接の弦に振動が伝わって鳴らしてしまい、微細な不協和音を出していました。こんな不協和音を出しながらでは、いかに優秀なピアニストでも音響環境に合わせる調整能力が発揮できませんし、その能力を磨くこともできません。

超弱音システムならば全体の音量を精密に下げることができますので、そのなかできちんとした打鍵の強弱が実現できるのです。従来の全音一括弱音化では不可能であった一音一音の明瞭な弾き分けができますので、俗っぽい言い方をすれば、電子機器のボリュームに相当する機能と言えましょう。

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